私の話を全部聞いてくれた梓さんは、穏やかな笑顔を私に向けてくれた。
「そっか…。苦しかったでしょ?恥ずかしかったかもしれないけど、言ってくれれば相談に乗ったのに…。でも、いい兆しね!理解者がいてくれて、記憶も少し戻りそうだし。」
「はい!これからまた、旅館で働こうと思っています。」
そう。
やっと復帰する決意ができた。
…もう、話ができるくらいに大丈夫になったから。
「そっか…。無理しないでね。何かあったら、いつでも力になるからね。」
「ありがとうございます。」
私は笑顔で梓さんと別れた。
それから、島川先生の診察を受けた。
先生も私の顔を見て、少し喜んでるように見えた。
犬の件で、少し記憶の戻るきっかけが見えたけど、今は焦らないこと…と言われた。

