記憶の向こう側




「でも私の妹の代わりになってほしいわけじゃないの。あなたにはあなたの人生がある。まだまっさらの。」




まっさらの…

私の人生?




「記憶をなくしたことは、悪いことじゃないわ。新しいあなたに生まれ変わったの。全てをやり直すチャンスなのよ。」




看護師さんの言葉に、妙に納得してしまった。




この病院に来てから、ずっと不安だらけだった。




自分の記憶と闘ってたけど、何も出てこなくてイライラしてたし…




身元も分からない私に、お見舞いだって来るわけなかった。




でも…




確かに、ここまで来たら、前向きに考えていくしかない。





いつ戻るか分からない自分の記憶を当てにするよりも、新しい自分を創っていくことが、この辛さを楽にすることができるかもしれない。