記憶の向こう側





私はまだ眠たい目をこすりながら、ご飯を買いにコンビニまで歩いた。




「叶恵ー!」




私を呼ぶ声に振り返ると、勇樹が割烹着姿で自転車に乗っていた。




「勇樹…。今日も仕事?」



「ああ。今からお前の旅館に仕出し弁当持っていくとこ。」




勇樹は忙しそうだけど、やる気に満ちあふれた笑顔を見せてくれた。




「もうそんな時間…?」




と言いながら、私はポケットに手を入れて時計を探した。




「お前、さっき起きたのかよ?だらしないなぁ。」




ポケットから勇樹に視線を移すと、勇樹は少し呆れた顔をしていた。




「え…っ。」




やばい…



休み中とはいえ、だらしなかったのかな?




…と思いながら、恐る恐る勇樹の目を見つめた。




だけど、勇樹は怒る訳でも呆れた訳でもなく、いきなりこう言った。




「今日、飯食いに行こう!夕方行くから、俺ん家いろよ。」




え?


話が変わった??




「う…っ、うん。」




その勢いに負けて、私はうなずいてしまっていた。




「俺、仕事あるから。じゃあまたな。」




何が何だか分からないうちに、またしても私と勇樹は夕飯を一緒に食べることになっていた。