記憶の向こう側




「名前…ですか?」




いきなりの提案に、私は少し戸惑った。




「ええ、自分の好きな名前でいいの。その方が私達も仕事しやすくなるしね。」




そんなこと、急に言われても…。




「でも…何も思い付きません。」




ポツリとそう言った私に、花を生け終わった看護師さんは、微笑みながら言った。




「気楽に考えていいのよ。それを一生の名前にするわけじゃないんだし。」



「うーん…。」




確かに…



仮名でもいいから、名前はないと色々不自由する。




それはこの何日かで、よーく身にしみたけど…




いざ仮名を考えようとすると、やはり悩んでしまう。