『“お父さん”と呼んではくれませんか?』と、月瀬さんは私を抱く腕により一層の力を込めて言った。


………ん?

“お父さん”?


「あの、月瀬さん何言って、」

「僕が貴女のお父さんになります!だからどうかこの僕を、お父さんと…!」

「いや、ホント何言ってるんですか?!」


勝手に盛り上がっている月瀬さんを無理やり引き剥がして、困惑しつつも見上げる。


綺麗な青緑色の瞳は、真っ直ぐ私を捉えていた。


「僕がお父さんでは不満ですか?」

「いえ、それ以前の問題ですけど?!」

「……何でしょう?」

「え、本気で言ってるんですか?」

「本気ですよ!僕は貴女と暮らしたいんです。
うら若き乙女の貴女がこんな寂しい場所で、それもたった一人で、夜毎枕を涙で濡らしているかと思うと、僕は萌え…っ、
いえ、耐えられませんっっ!!」


い、今“萌え”って…!

この人変態だっ!!


私は再度全身が粟立つのを感じて、身震いをした。

何とかこの人に諦めてもらわなければ、自分の身が危ない気がする。


「月瀬さん。アナタはきっと、私のことを心配してそう言ってくれているんでしょうけど、今日初めて会ったばかりの方にそういったことをお願いするわけにはいきません。」

「僕は構いません。貴女に必要とされることが僕の望みですから。」

「……では、はっきり言わせていただきますね。
私の父は、死んだ清岡柊一ただ一人です。新しい父親なんて要りません。清岡柊一の他に、父になってほしい人はいないんです。」


きっぱりそう告げると、一瞬、月瀬さんの瞳が揺れた。