「蒼、大丈夫?」

「おぉ、」



萌亜ちゃんの教室の前を通る前、蒼に声をかけると少し緊張しているみたいで…。




「まぁ、授業中だし…ね?」


「おぉ、」



心ここにあらず。
その言葉がピッタリだった。


ずっとここに止まっている訳もいかず、とめていた足をまた動かした。



チラッと、
教室をのぞくと


「あ、蒼、見ちゃ!」



蒼には見せたくない光景にあたしよりはるかに身長が高い蒼の目を背伸びして手で隠した。


でも、すでに遅し。




「やっぱ、キツいなー」

苦笑いする蒼があたしの胸を苦しくさせる。



「蒼…」


心配で名前を呼ぶと、


「ありがとう。行こう、結城」


優しく、笑って
顔を、歪めて
辛そうな、目をして


蒼は先に教室に向かって歩きだしていた。




そんな後ろ姿をみて、
あたしは萌亜ちゃんの教室に視線をうつした。



「どうして、」



萌亜ちゃん。
どうして、あなたは蒼を選ばなかったの?


蒼を苦しめないで、
幸せそうな顔しないで…

あなたが幸せな顔してるせいで辛い顔する人がいるってことを、

お願いだからわかって。