「寂しそうな顔してないなら、それで安心した」 「本当にそれだけでいいの?」 天音は、私の腕を掴んで、そう迫ったけれど、私はその手をほどいて、仕事場へと向かった。 バックの中には、紫音がくれた折りたたみ傘。 私は決めていた。 もし、また雨が降ったら…その時は紫音に伝えようって。 今、私が寂しいのは、紫音のせい。 さよならの後で気づいたの。 紫音。 寂しい気持ちじゃなく……。 今、このどうしようもない愛しさを、あなたに抱いて欲しい。