天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅡ

悔しくて、見返したくて、でも実力の差は如何ともし難くて。

歯噛みして堪えていた涙が、ぶわっと零れ落ちる。

「……彼は、彼氏ですか?」

こはくの言葉に。

「そっ、そんなんじゃないよっ」

目を両手で擦りながら、きょうこが言う。

「あんな奴、ナンパだし軟弱だしお兄ちゃん似のヘタレだし…彼氏にするなんてありえねっての!」

「そうですか…」

コロコロと笑うこはくは。

「幸せそうですね」

満面の微笑みを見せる。

「……あったり前じゃん!私の可愛さに、陽の奴メロメロなんだからっ」

泣いたカラス、もう笑う。

まだ涙も乾かぬうちに笑顔を見せたきょうこは。

「私が優勝してアイドル扱いになったら、もう陽の手の届かない存在になっちゃうからね…そうでなくても『美少女二十選』にまで選ばれてんだもん」

クルリと踵を返すきょうこ。

その足が、一歩一歩場外へ。

「そしたら陽の奴がべそかいて淋しがるから…」

トン。

彼女は自ら場外へと降りた。

「このくらいで勘弁しといてやるかっ、優勝はまたの機会にしてやるよっ」