藤本は少しためらった様子で息をつき、
「…俺は何も知らないと言いたいところだが、その手紙…と言っていいのか?」
訝しげな顔をする。
声をそろえた二人、
「「そ…それは…心中お察しいたします…」」
千早の手紙はもはや手紙ではないと言いたい春疾たちである。
「まぁ、いい。その手紙は降川の願い…想いでもあり真実とも言えるだろう」
やっぱり!春疾たちは確信した。
ここに千早のことが書かれている!
すべての真実が書かれていると言っても過言ではないのだろうか。
そう思った。
なら、藤本はすでにこの手紙の内容を知っているのか。
そう考える春疾に藤本は察したのか、
「と、言っても俺は手紙の内容は分からない。分かる事といえば…」
言いかけようとした時、どこから聞き覚えのある声に塞がれた。
「藤本先生!」
「皆川!」
「お久しぶりです」
「本当に久しぶりだな。元気にしてたか?」
「はい。子供…息子も元気にしてます。今漸く立って歩けるようになったんですよ」
皆川と呼ばれた青年…いや少年は藤本と親しそうに声をかけ、話をする。
皆川 涼太(ミナガワ リョウタ)はかつて千早たちの後輩であった。
そして、皆川という男は千早に恋をしていた。また、千早は皆川とも噂をされていた。
「そうか。今日は高崎も一緒か?」
「美月は後から来ます。息子も連れて千早先輩のお参りを」
「…皆川も呼ばれたのか」
「はい。千早先輩に。約束だから」
そうはっきりと強い目で言った。
約束?どういうことだ?
今日、呼び出されたのは春疾たちを含め、藤本、皆川の4人。
何のために?この4人を千早は集めたのか。
なんの関係があるのだろうか。ますます訳が分からなくなってくる春疾と夏名だった。
春疾たちの存在に皆川は気付いたのか。
視線を春疾たちに向ける。
