「あ…勘違いするなよ。俺と降川はあくまで生徒と教師!師弟関係だ」

それは春疾たちに向けられたものなのだろうか。

それとも春疾だけなのか。

藤本と言う男を春疾たちは昔からよく分からない男だと思っていた。

優男のくせに勘は鋭いくせに女の感情には鈍い。

だけど…かなりモテる。

教師の中では藤本はかなり若い方なのだ。

しかも、授業の教え方は上手く、頭も切れる。

だからこそ女性陣の教師には好かれ告白されることが多い。

一方、男性陣教師には嫌われるもなく、親しみというものがありフレンドリーな感じなのである。

生徒に関しては影口やうざがられるわけでもなく、男女差別なく慕われ、好かれていると言っても過言ではない。

以前に不良だった生徒が藤本に出会い、改心し今ではかなりの有名大学のに進学したという実話もある。


まさに教師の鏡いや代表だ。


そんな藤本はかつて千早との噂があった。

だが、人の噂は75日と言って千早が来なくなった…いや、正確には転校したと聞かされた日を境に

その噂はすっかりとなくなってしまい、皆記憶から消し去ってしまったのだ。



「降川は俺の恩人だ」


「「え?」」


「俺はあのコに救われたんだ」


「先生が、千早にですか!?」

「ああ」


そう頷く藤本に春疾たちは驚きを隠せずにはいられなかった。


千早と藤本にかつて何が起こったのだろうか?


千早は何故死んだのだろうか?

真実を…本当のことを知りたい。

春疾たちはそう思えてならなかった。


二人はあまりにも知らなさすぎる。


一体何が起きて千早は死ななければならなかったのか。


過ぎ去った過去はあまりにも長い時間が経ってしまっている。

今さら知ろうにも、知り得ることができない。


だが、千早が生前書いたであろう、小説…もとい遺書に書き記しているなら…。




「それ、降川が書いたやつか?」

藤本は春疾が抱えていた遺書を指差した。


頷いた二人に藤本がどこか遠く見て、「そっか…」と言った。


この先生は何か知っているんだ、と春疾たちは勘づく。



「藤本先生は何か知っているんですか?」

はっきりしないこと、うじうじとしているのが嫌いな夏名はきっぱりと思いきって言った。