決して、誰にも言えない約束ではない。だが、何故か言う気にはなれない。


しかし、今日春疾たちに会ってしまった。

これは言うべきなのだろうか・・・そのことを頭の片隅に悩みながらも置いた。




「約束って何ですか!?」

「数年前にな…あの子と約束を交わしたんだ。まあ、あの子は約束を約束だとは思ってなかったと思うがな…」

夏名の質問とはちょっとずれた回答をする藤本はどこか懐かしげな眼であたりを見る。


「??」

「あの子って、ま、まさか…千早ですか!?」


春疾の尋ねに藤本は無言で目を閉じ、少し間をおいて、無言で頷いた。


「何だよ…約束って」
春疾は苦苦しそうに呟いた。

それは嫉妬のようで自分の無力さに嘆いて怒っているようにも思えた。

「藤本先生……。そ、その…千早が死んだこと知っていたんですか…?」


「守山…。正直言うと…知っていた。そして、今回のことで俺はあの子…降川に頼まれていた」

頼まれていた?一体何を?と春疾の脳裏に言葉が浮かびあがる。


春疾は一度だって千早に頼まれごとをされたことがなかったのに…なのに藤本という男…いや藤本先生には頼みごとが出来たのか…。

生前、千早と藤本は余程仲が良かった、と安易に読みとれた。

恋人…という関係だったのか。

それとも、春疾のみたいに…

いや、それは今となっては分からない。藤本以外は。


やつあたりの出来ない嫉妬に渦巻かれる。

そんな嫉妬で藤本を責めたりやつあたりするのは甚だしい。

お門違いもいいところだ、と春疾は敢えて、冷静になる。



そんな春疾の様子を悟ったのか藤本は即座に否定する。