「それは―――私が送ったのよ」

と後ろの方から女性の声がした。

二人はその女性の方を振り返った。


「久しぶりね、夏名ちゃん」

その女性は夏名のことを知っており、軽く微笑んだ。

女性は40代半ばくらいの風貌で赤ちゃんを抱えて、隣には50代くらいの中年男性がいた。

そう―――この女性は千早のお母さんだ。

そうなれば隣にいるのはもちろん千早のお父さんだ。

「お久しぶりです…」

夏名は軽く会釈する。


「すまないね…驚いただろう。千早のメールがきて」

「あ、はい」

千早の父は夏名にとってあんまりいい印象ではなく顔を上げることすら恐れていた。

だが、今はそうでもなかった。

2年前までは怖い厳格でまさに昭和の男みたいな人だった。でも、今ではすっかり垢抜けて丸くなった気がした。そのような雰囲気を纏っていた。



「そのメールは妻が送ったんだ」

「え?何のために」


どうしてこんなことをしたのか。

春疾たちはそう思った。

だけど、このメールが来なければ春疾たちは千早が死んだことも知ることはなかっただろう。