その一言は重たく冷たく悲しみに満ちた低い声だった。


「え・・・?」


嘘だよね?とても信じられなかった。

あの千早が死んだなんて・・・。


全身の体温が一気に下がり、足元ふわふわとしたような感覚。

時が進んでいるはずなのに時が止まった感じとはまさにこのことなのだろう。


それくらい夏名には信じがたい言葉だった。

春疾に夏名は問い詰めるかのように迫った。


「ねえ・・・ウソでしょ!?あの、千早が・・・死ぬなんて―――。そんなはずがないわ!何かの冗談でしょ!?」

と、春疾の胸倉を掴み、締め付ける。

「はは・・・冗談だったらどれほどいいんだが・・・」


枯れたような声で春疾は嘲笑う。

それは自分だって未だに信じがたいことなんだと言ってるように聞こえた。

夏名と一緒で春疾も夢だろ?死んだなんて嘘だと思いたかった。

夏名の目から涙が頬をつたい、その滴がぽたりと地面へと落ちていく。

目から涙がどんどん溢れる。

どんなに泣くのを抑えても声を押し殺しても涙は止まらなかった。

夏名自身、まだ千早のことを親友だと思っていたことに気付かされたのと同時に千早のために泣いていることが嬉しいのとこの世にはもう千早はもういなくて

まだ伝えてないことばかりが頭の中に言葉が溢れかえる。

死んでしまったらもう何もかも遅くて、相手に伝えられない。


仲直りすらまだしていなかった。後悔と罪悪感に身を犇かされる。

夏名はその場で泣き崩れたかった。


春疾は夏名を抱きしめた。

ここで泣いていい、と言っているかのようだった。

お互い支え合うようにして何も言わず涙だけを流す。

しばらく、沈黙する。

その沈黙はただ虚しく、心にぽかりと穴が開いた感覚に陥るかのような。

最初に口を開いたのは夏名だった。