トイレのドアをそっと開けると……、そこには、美香が言っていたとおり、蓮がいた。
「紗羽さん、大丈夫?」
「蓮」
蓮の顔を見ると、凄く安心してまた涙がこぼれた。
蓮はそんなあたしを見て、いつものようにやさしく抱き締めてくれた。
蓮の大きな胸に包まれていると、凄く気持ちが穏やかになる。
「……紗羽、バッグ持ってきたよ」
近付いてきた足音が止まった瞬間に、放たれた声。
蓮から離れ、美香からバッグを受け取った。
「うまいこと言っとくから、気付かれないうちに帰っちゃいな」
「美香、ありがと」
美香の気遣いに感謝しながら、居酒屋を出た。
そのまま蓮と手をつなぎながら、アパートへ帰った。
いつものように、二人であたしの部屋に入って、蓮に寄り添うようにして床に座る。
「やっぱり泣いちゃった」
「いいんじゃね?泣いて泣いて泣いて泣いて……すべて涙と一緒に流しちゃえばいいんだよ。そのうちすっきりするよ、きっと」
「うん」


