あなた色に染まりたい

「違う!そうじゃなくて……いつまでたっても支える位置から動けないんじゃないかって」


「……どういうこと?」


「だから、気が付いたら他の男に紗羽さんをとられてそうで、怖い」




蓮の本音を聞いて、あたしもちゃんと自分の想いを話さなきゃって……そう思った。




「それはないよ。だって、今そういう位置に一番近いのは、蓮だもん」


「……マジ?」




大きく見開かれた蓮の目を見ながら……、コクンと頷く。




「でも……正直まだ、付き合うとか考えられない」


「そっか。今は俺が一番近い位置にいることでよしとしなきゃな」




蓮は心底ホッとしたように微笑みながらそう言って、握る手に力を込めた。




部屋に戻ると、ちょうど夕食時間だった。


お腹いっぱい食べて、もう一度温泉に入った。




帰ってくると、部屋には並べて敷かれた二枚の布団。


なぜかドキッ……とした。


意識してる、あたしがいた。




「紗羽さん、もう寝る?」


「え、うん。寝ようかな」




平静を装いながら、そう答えた。