あなた色に染まりたい

「…わ……さわ……紗羽!」


「あ……蓮。」




何が何だかわからずに、パニクっているあたしを見て、隣に座っている蓮が、心配そうに顔を覗き込んできた。


どうしよう……


あたし、かなり動揺してる。


こっちに来ないよね。


来ないで……




でも、そんなあたしの願いも虚しく、キャーキャー言っている声が食堂にやってきた。


無意識に蓮の手をギュッと握ったら、蓮も握り返してくれた。


食堂の入口に背中を向けて座っているけれど、前に座っている三人の反応を見ればわかる。


きっとこっちに向かってきているんだ。




「大輝さん。」




最初に声を出したのは……晴希だった。




「おぉ……晴希、おまえ変わんねぇな。」




忘れるはずも、ない。


大好きだった人の声。




「悟と美香も変わんねぇ。まだ付き合ってんのか?」


「はい。」




目の前での会話は耳に入ってくるけど、あたしはうつむいたまま顔を上げられずにいた。




「紗羽、ちょっと話あんだけど。」




その声に、顔を上げると……二年半前よりはるかに大人の男になった、大輝が立っていた。