あなた色に染まりたい

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「紗羽」



どれだけ経ったのか……


ふと呼ばれた声に振り返ると、そこには美香が顔を歪ませて立っていた。



「泣いていたの?」


「うん……なんかね、まだ忘れられないみたい。このピンク色を見ると、すべてを思い出しちゃうの」


「紗羽……」


「ねぇ美香、いつになったら忘れられるのかな? どうやったら忘れられるんだろうね。あたし、早く忘れたいよっ――」



また、涙がぽろぽろと溢れてきた。


美香も泣きながら、あたしに抱きついてきた。



しばらくそうしていたけれど、このままここにいてもなにも変わらない。


だから、



「美香、ごめんね……今日はもう帰るよ」


「待って、あたしも帰る。今日は一緒に飲もうよ!」



美香はいつもこうだ。


あたしが落ち込んでいると、こうやって励まそうとしてくれる。


たぶん、一人で泣いていることもわかっているんだろうなって思う。


だからこういう日はあたしを一人にしないんだ。