あなた色に染まりたい

でも……平気だ。


大輝の話をしているのに、涙が出てこない。


これって凄いことだよ。




「今だから言うけどさ、俺、紗羽のこと好きだったんだよな。だから大輝さんと付き合い始めた時は、すっげぇへこんだ。」


「……」




突然のカミングアウトに、なんと言っていいのかわからない。




「夏休み前の飲み会で、大輝さんとはもう会ってないって聞いて、もう一回頑張ってみようかと思ってたのにさ……今度は蓮と付き合い始めたって。つか、いつから付き合ってんだよ?」


「一ヵ月くらい前から。」


「そっか……なぁ、それより視線感じねぇ?」


「え……」




視線?


何の視線?




「いつもこの講義終わったあとに、声かけられてた?」




晴希にそう聞かれて、いつものこの時間を、頭の中で巻き戻してみる。


あ……




「……そうかも。」


「ぜってぇ俺から離れんなよ?」


「うん。」




怖い……


蓮、怖いよ。


講義が終わったけれど、何かが起こるのかもしれないって思うと、凄く怖くて……晴希の服の裾をつかんでついていった。