中学に入学したあの日。
あたしは今でも鮮明に覚えている。

「綾羽(あやは)。新しいお父さんよ」
「こんにちは。幸雄です。よろしくね」

胡散臭い笑顔で話しかけられて。
むかむかしたのを今でも覚えている。
小3で亡くなった父。
母は男がいないと生きていけないらしい。
2度目の再婚。
一度目は気が合わなかったみたいで1年で破局。
次はいい男探すと言っていた。



「うっせんだよてめぇ!ぶっ殺すぞ!」
「ごめ・・・んなさ・・・ぃ」

中2の秋。
幸雄と名乗って、あたしのお父さんになった男が暴力をするようになった。
母は見て見ぬふり。
苦しくて、狭くて。
早く家から出たくて仕方なかった。
友達はたくさんいたから、泊まり歩いて。
そのまま家に帰り殴られる。
そんな毎日が2年続いて・・・。



「お母さんは幸雄さんと離婚しようと思うの」


待ちに待ったこの言葉。
でも、母なんて所詮・・・。

「それでね、今度は正樹さんっていうね・・・」

・・・やっぱり。どうせこんなもの。
父も、母も。
おかしいんだよ。
あいつは、あいつらは。
もういらない。
こんな家族なら、いなくてもいい。

「お母さん。幸せになりなよ」

あたしは孤独を選んだ。