「…なぁ、ミオちゃん。おれ酔ってるついでに少しだけ話していいか?」

「あ、うん!どうぞ!聞かせてよ!」

「明日には忘れてな?」

「おっけ!」

「うん…あの、な?」

「うん」

「おれが高校生の時だったんだけど…」





ヨウスケくんの話は

ちゃんと
聞いていたけれど

あたしは心は
うわの空の様な、

…ヨウスケくんの声は夢の中で囁かれている様な
そんな不思議な感じだった。





彼女を校内で見かけてから
ほとんど行っていなかった学校にもその彼女に会うためだけに通い続けた事。

そして毎日姿を見つければアピールして告白し続けた事。

その思いに押されてヨウスケくんが高2の秋に彼女が

『負けた』

と、
やっと付き合えた事。

だけど
あまりにもすき過ぎて空回りばかりしてしまった事。

そして彼女が卒業する前日に

『あんたにあたしはもったいない』

と、
フラれた事。

だけど諦めきれなくて追いかけようとした時、彼女はすでにここにいなかったという事。

その時に初めて知ったのは
彼女の行きたかったらしい、という東京の大学に受かってすでにここを発った後だった事。



彼女はここに いなかった

自分だけが知らなかった

地元の専門学校に行くとだけ伝えられていた

追いかければどうにかなると思った



だけどどうにもならなかった。



「おれ、金も何もないただの高校生だぜ?」



彼女はここに いなかった。