その書き出しには、こう書かれていた。
『こないだ話してた“魔法のチョコ”のレシピを教えてやるよ。
もちろんウチの店で売ったのとまったく同じものを作るのは無理だし、市販の材料を使って作れる方法を教えてやるから、がんばってチャレンジしてみろよな』
ここまで読んで、あたしは分かった…、
こんなレシピをわさわざ送ってきたってことは、つまり…、
“バレンタインデーにあたしからの手作りチョコが欲しい”
…って思ってるんだ、って。
…ったく、チョコが欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのにさ。
ホント恥ずかしがり屋さんなんだから♪
まだバレンタインデーまでには10日以上あったけど、今まで料理なんてほとんどしたことのないあたしは練習のつもりで、その夜から早速チョコ作りに取りかかった。
でも“魔法のチョコ”のレシピなんて、たいそうなことを言ってるわりには、実際は市販のチョコをいったん溶かして、型に入れて、あとは冷蔵庫で固めるだけというもので、これならあたしにもできると思った。


