しょーがない。
今日1日はガマンして、あした学校の帰りに『王様のショコラ』に行ってみよう。
ところが、あたしの考えることは全部パパにはお見通しだった。
「いってきます」
翌朝、玄関のドアを開けたあたしは、家の前で待っていたスーツ姿に白い手袋をしたおじさんからあいさつをされることになった。
「おはようございます、お嬢さま」
「山野辺…さん!?」
あたしは幼稚園、小学校、中学校と、いずれも大学附属のところに通っていた。
でも、それらは自宅から少し離れたところにあったから、その頃のあたしはこの山野辺さんが運転するリムジンで毎日送迎してもらってたんだ。
私立高校への進学と同時にさよならしたはずの山野辺さんが再びあたしの前に戻ってきたってことは――――
「今日からお前の学校の行き帰りは、山野辺のリムジンで送迎させることにした」


