「アンタはタダのパティシエであって“魔法使い”なんかじゃない。アンタんちでチョコを買った人たちは、たまたま偶然みんな両想いになっただけなんだよ」
「そんなことねぇよ。まぁ、たしかに“魔法”っていうのは言い過ぎかもしんねぇけど、あのチョコラはある意味“お守り”みたいなものだったんじゃねぇかな」
「お守り?」
「“絶対に両想いになれる魔法のチョコをゲットした”っていう思い込みが、強い意思のチカラになって、普段は出せない勇気を振り絞って、好きな男に告白することができたんじゃねぇかな。だから、その勇気の結果として両想いになったんだと思う」
「なるほど、そーいうことか…」
「そーいうことさ♪」
「ねぇ、王子。今年のバレンタインも、その“魔法のチョコ”を販売するの?」
「いや、今年は売らねぇ」
即答だった。
「…つーか作らねぇし」


