「なんか知らねぇけど……なんか、お前の名前を呼ぶのがさ……なんか、すごく恥ずかしいみたいな感じがしてさ……なんか、恥ずかしくて言えねぇんだよ……」
王子の顔が耳まで真っ赤だった。
「…!」
なんか、その感覚、あたしにも分かる気がするよ。
あたしの場合、中2のとき、好きになった男のコの名前が“鈴木くん”っていう、ごくありふれた名前だったんだけど……。
なんかミョ~に意識しまくっちゃって、その人の名前をクチにするのさえ、すごく恥ずかしくなっちゃった記憶があるよ。
他の人の名前ならフツーに何度でも言えるのにね。
なのに、本人に向かって名前で呼びかけるのはもちろん、例えば友達との会話の中なんかで、その好きな人の名前をクチにすることさえも、すっごく恥ずかしくて、とーてい無理なことだったような記憶がある。
…ってことは!?
王子があたしの名前を呼べないってことは、あたしのことをトクベツな存在として意識しまくってるってことだと思うし、つまり王子はあたしのことがっ!


