「…たく、なんで自分だけ振り袖とか着てくるかな。これじゃ、普段着のあたしたち二人が思いっきし翔子の引き立て役じゃん」
「あの振り袖、きっと何十万もするんじゃね? あ~ァ、あたしもお金持ちの子どもに生まれたかったな」
「つーか、新年早々気分悪いわ」
「ねぇ、千夏? 翔子がトイレに行ってるあいだにあたしら先に帰っちゃおっか?」
「それいいかも♪ あのコ、いつもあたしたちに甘えてばっかで、自分一人じゃ行動できないから、置いてけぼりにされたらそーとー焦るよ。つーか泣くんじゃね?」
「ソレ、超ウケる♪ やっちゃおっか?」
「やっちゃえ、やっちゃえ♪ 世間知らずのお嬢さまにはいいクスリになるよ♪」
「…!」
たしかに二人がいうように、世間的にはあたしは“お嬢さま”なのかもしれない。
千夏&朋子がフツーにコートやブルゾンを着てるのに、あたし一人だけ振り袖姿。
でもパパが「着て行け」って言ったし、もちろんあたし自身も初詣に着て行くのをすっごく楽しみにしてたし。


