「そうよ。それに今はあの子の父親がパリにあるスイーツSHOPの経営を任されているから、日本のこのお店は二代目店長のあの子が全部仕切ってるのよ」
「えっ、王子がこのお店の店長なんですか? あの若さで店長をやってるなんて、なんかすごいですね」
「ウフフ…。若くても経験は豊富だから」
「それにしても元旦からお仕事ですか?」
「ウフ。日本人のみんながみんな“おもち大好き”とは限らないでしょ?」
そして―――
あたしは里子さんに連れられて、トクベツに『王様のショコラ』の厨房に入れてもらえることになった。
王子は、パティシエの白衣を着て、料理を作る人たちのシンボルマークともいえる上に高く伸びた長い帽子をかぶって、襟に真っ赤なスカーフをしていた。
テキパキと仕事をこなす王子の手の中で、まるで小っちゃな芸術品のようなお菓子が次々と生み出されていく。
それはまさにイリュージョンのマジックを行なう魔術師のような、華麗で鮮やかなテクニックで…、
「………」


