菓恋(かれん) ~be+ひと目惚れing~

「“名家”っていうか……パパは洋菓子屋さんの社長ですけど……」

「ひょっとして、お名前は“加藤幸造”さんっていうんじゃないのかしら?」

「どーしてパパ……いや父の名前を知ってるんですか?」

「ウチは、あなたのお父さまの洋菓子店『王様のショコラ』のチェーン店なのよ」

「そっか…」

そーいえば、このお店も『王様のショコラ』って名前だっけ。

世の中っていうのは意外なところでつながってるもんだ。


「大切な娘が朝まで帰ってこないんじゃ、お父さまもさぞ心配なさってるでしょうから、あなたは早くお家にお帰りなさい。今、タクシーを呼んであげるから」

「ありがとうございます。でも、あたし…」

「はい?」

「“王子”にちゃんと昨夜のお礼を言っときたいです」

「王子は多分もう厨房に入ってると思うわ」

「厨房?」

「王子はウチの“パテェシエ”だから」

「へぇ、王子ってパティシエだったんですね」