「あらあら、いつまでもそんな長襦袢一枚でいたら、ガトーショコラちゃん、風邪ひいちゃうわよ」
だからガトーショコラじゃない、って……。
「さぁさっ、レディの“おめしかえ”の時間よ。今からこの部屋は男子禁制になるから、王子は出てった、出てった」
「へいへい…」
凱――いや王子が部屋を出ていくと、里子さんは馴れた手つきで、たいして時間もかからずに、あたしの振り袖の着付けを終わらせてしまった。
あたしなら何時間かかってもできそうにない、面倒くさそうな着物の着付けをあっという間に終わらせちゃうなんて、ヤッパ長生きしてる人はすごいなと思った。
「かわいいわ。その振り袖、あなたにすごく似合ってると思う」
「いやぁ、そんなことないですよぅ~♪」
あたしは思いっきり照れまくった。
「その振り袖、すごく上等な振り袖みたいね。ひょっとしてあなた、名家のお嬢さまなんじゃないかしら?」


