灯かりを目指して走って行くと、そこは童話“三匹のこぶた”に出てくる家みたいな、レンガ作りの北欧の古民家風の外観を持つ、ちょっとお洒落な感じのお店だった。
店先には手入れの行き届いたハーブの鉢植えが並んでいて、そこに置かれた手作り風の看板には『王様のショコラ』と書いてある。
閉められたカーテン越しに店内には灯かりがともっていて、入り口のドアには『アルバイト急募』の貼り紙が見える。
「ドンドンドンドン!」
あたしはドアを思いっきり叩きながら叫んだ。
「開けてくださいっ」
「ドンドンドンドン!」
「営業開始は朝の10時だ。悪いがその時間にもう一度来てくれ」
お店の中から聞こえてきたのは、若い男の人のぶっきらぼうな感じの声だった。
「あの、すみませんっ。買い物しにきたんじゃないんですっ」
「じゃあ、ウチに用事はないはずだろ?」


