ブロってますか?

健一にもたれたまま、軽い寝息を立てる理恵。
思わず理恵の頭を撫でる健一。
健一は幸せであった。が、この幸せは一瞬の事であり、幻のような物である。この瞬間が永遠に続く事など有り得ない。それはわかっている。だがこの時が永遠に続いて欲しいと切に願う健一だった。

暫くし、再び歩き始める2人。駅前でタクシーに乗り込む。健一は理恵の状態を見てアパートまで送る事にした。


理恵のアパートまでは、電車で一駅分の距離である。アパートに着き運転手に待って貰い、アパートの部屋に理恵を送り届ける健一。
部屋の中は小綺麗で、理恵の人柄を表してるかの様だ。


「それじゃ、明日も仕事遅れるなよ。」

「待って~けんちゃん。」


恐らく無意識のうちに岡村をけんちゃんと呼ぶ理恵。


その言葉に思わず理恵を抱きしめ、唇を重ねる健一。お互いを求めあうかの様に絡みつく舌と舌…


ふと我に返り理恵から離れ、


「おやすみ…」


それだけ言うと、待たせてあったタクシーに乗り込む健一。

タクシーの中で暫く放心状態の健一。
『何故?抱かない』

『いや、これでいいんだ。焦るな。』


心の中で2人の健一の葛藤は、ホテルに帰るまで続く…