翌週、再び営業所に向かう健一。


『どうしょう…動悸が激しい。まるで高校生の時に女の子に交際を申し込んだ時みたいだ。まぁ、理恵チャンは僕が健とは知らないはずだし。』


駅のコンコースに、営業所の車があるのを見つける健一。
中から近藤が降りて来る。


「先輩~!お疲れ様です。お迎えに参上しました。」


「おっ、ありがとう。仕事は?」


「丁度この近くに営業に来て、今から営業所に帰る所です。所長から着時間を聞いていたから、待ってました。」


「それは悪かったな。忙しいのに…、で順調に行ってるか?」


「今の所可もなし不可もなしって所ですかね。所長は相変わらず、何しに来てるのかなって感じですけど。」


「そうか、新人さんはどうだ?」


「西川さんは真面目にやってますよ。佐藤はね…なんかよく分からないんですよ。」


「分からないって?仕事はしてるんだろう?」


「どうも面倒な事は西川さんに押し付けてる様な気がします。はっきり分からないけど…」


「そうか…」


それ以降、車中の健一の胸中は複雑だった。話掛けて来る近藤の問いにも上の空。
やがて、車は営業所に到着した。