それから2人は、大いに喋り、笑い、歌い、気が付けばもう12時前になっていた。


「さぁ、そろそろ帰ろうか。」


会計を済ませ、タクシーを拾う為に駅に向かう2人。
理恵がよろける。
慌てて抱きかかえる健一。


「大丈夫?飲み過ぎたかな?」


「大丈夫れ~す。次にいきましょー!」

一気に酔いが回ったかの様な理恵。


通りは、ホテル街である。
健一は迷った。
健一も男である。
が、健一は理恵を抱きかかえタクシーに乗り込んだ。
恐らくホテルに入っても理恵は拒否しないだろう。
しかし、それでは今までの我慢が水泡に帰す。己の欲望に漸く打ち勝ち、昨夜送った理恵のアパートまでの道順をタクシーの運転手に告げる。料金を運転手に握らせ健一は自分のホテルに帰る気だったが、理恵が強引に健一をタクシーに引き込む。


「しょうがないな~じゃうちまで送るよ。」


一緒にタクシーに乗り込み、理恵のアパートに向かう。
車中で理恵は健一の腕に己の腕を絡ませ放さない。


やがて車はアパートに着く。


「じゃ、気付けて。お休み。」


「嫌!中まで送って!」


理恵が駄々をこねる。


「お客さん、どうします?」
運転手が聞く。