異世界転入生

「…やっぱ、圏外だよね…」

電波が入ってない事を確認して、ため息を一つ
特に目的があるわけでは無いが、携帯をいじる
メールだって、ネットに繋ぐことも何も出来ない携帯
自然と、メールの受信ボックスを開き、そこに残るメールを読む

「…ぁ…週末、美紀と遊ぶ約束してたんだった!!!
それに、ココだと連絡取れないから、美紀からメールや電話あったら出られない!!
どうしよう!!!」

ガバッと起き上がり、どうしようかと考える
寝ている間に来たので、連絡なんか出来ていない
事前に教えられてもいなかったので、それっぽい話しもしていない
急に消えた友人となってしまう

「母さん!!父さん!!!」

ユウは、慌てて階段を駆け下りる
2人がいるであろうリビングに、バタバタっと入る

「どうしたの??」

声をかけたのは、ルイ
ディールはユウの慌てように、首を傾げている

「あ…のさ…僕、週末美紀と遊ぶ約束してたんだけど…どうしたら…」

ユウの不安そうな顔を見て、2人は顔を見合わせる
それは、お互い顔色を伺っているようで…視線で話し合っているようだった

「ユウ…その…言いにくいんだけどね…」

いつもと違い、深刻そうな顔で話すルイを見て、ユウの不安は大きくなるばかりだ

「向こうの世界でのユウ…いえ私達の存在は消してきたわ」
「なっ!?」

予想外の言葉に、ユウは言葉を失った
まさか、自分の存在が消されているなんて、思いもしなかった
聞きたいことは一杯ある…言いたいことも一杯ある…けれど、胸がキリキリ痛くて、頭の中もぐちゃぐちゃで…ユウは何も言えず、立ち尽くすしか出来なかった

「「…」」

そんなユウを見て、2人は悲しそうに顔を見合わせていた
でも、キチンと全てを話すべく、ルイは続きを話す

「これには、ちゃんと理由があるわ
この先、ユウが向こうの世界に行ったとしても貴方を知る人がいないから
そして、存在を残しておくと、記憶に残ってる人を混乱させてしまうからよ」
「そ…そんなこと、分からないじゃんか!!!」
「分かるわ…ココの時間の流れと、向こうの時間の流れは異なるの」
「そんなの知ってる!!1日は70時間で1年は…っ!」

ユウは、自分で言いながら気づいてしまった
気づいた瞬間、ユウの顔は悲しみ染まる
泣くことを必死に堪えている…そんな表情だった