メロンパンにさようなら


「何か飲む?」

そう言って、自販機を指差した彼に、


「いえ」

と断ると、

「奢るけど?」

と念を押されてしまった。


いや、初対面の人に奢ってもらう気なんてないし。
それに、今は本当に飲み物を飲みたい気分じゃない。


「いえ、本当に結構ですから」

「そ?」

そう彼は言うと、ポケットから小銭を取り出し、自販機の中へ入れ、“ピッ”と、ボタンを押した。



“ガシャンッ!”

と音がして缶が落ちてきて彼は、それを取り出すと、プシュッ!とプルタグを開け、ジュースをごくりと一口、口に運んだ。


「大変だよな、高見の相手も」

「え?」


なんで、ここで“高見”が出てくるのか分からない。

彼は、ごくりと、また一口飲むと、

「付き合ってんだろ?高見と」

当たり前のように言われたその言葉に、


「はぁ!?」

思わず、大きな声を出してしまった。