何も言わずに星空を眺めている高見翔に、


「じゃ、さようなら」

と言い、背中を向けて屋上の扉の方へ歩いた。



“おいっ”とか、“待て”とか、そんな言葉を期待していたけれど、呼び止めてはくれなかった。

それが、なんだか寂しくて、校舎の中へ入ると、涙が出そうになった。




あなたの心のうちをみせられるのは、私じゃないんだ。

あなたは、そうやって、見え隠れしている寂しさを無理に隠そうとするんだ。


ねぇ、あなたの心のうちをみせられる相手って、誰ですか?




「帰ろ」


誰に言うわけでもなく、気分を変えるように自分に言い聞かせ、一歩前へ踏み出そうとしたら、



“ギィ…ガシャンッ”


屋上の扉が開く音がして、振り向くと、高見翔が少し息を切らして立っていた。