“ギィ……ガシャンッ”
錆付いた屋上の扉を開け、そこに出ると、高見翔の姿があった。
彼は、私に気付いているのか気付いてないのか分からないけれど、ただ、星空を眺めていた。
「何してるんですか」
声をかけながら、一歩、また一歩と近づいて行った。
「別に。ただ星を見てただけ」
「そうですか」
「そ。お前の方こそ何してんだ」
ただ会いたくなっただけだとは、恥ずかしくて言えなくて、
「帰る前に、挨拶に来ただけです」
と、可愛くない言葉で返事をした。
「そっか」
「そぅ」
いつもなら、憎たらしい言葉の一つや二つ返ってくるなのに、それがない。
用が終わったんならさっさと帰れ。と言わんばかりに、視線を夜空に戻し、ただただ空を眺めている彼の姿を見ると、やっぱり、ここに会いに来たのは間違いだったんだって思ってしまう。


