メロンパンにさようなら


「なんで、お前がいるんだよ」


グラウンドから、少し離れた場所に連れてこられて、彼が、開口一番、そう言った。


なんでって……

高見翔が、あんただって確かめに来たの。

と言うことが、本人を目の前にして言うのは、なんとなく失礼になる気がして。

こんな有名人知らなかったって、怒られそうな気がして、


「あっ、今日のお礼を言うために?」

なんて口から咄嗟に出た言葉。


「お礼?」

怪訝な顔つきで、こっちを見る彼に、


「そう、お礼。メロンパンのお礼」


そう言うと


「あ〜……んなの、聞こえてたし」

と小さな声で呟かれた。


「え?」

「いや、なんでもねぇよ」


今、聞こえてたって言った?
あの、昼休みのあの声、きちんと届いていたんだね。


「それだけ?」

「あっ……えぇ、それだけです」


それだけじゃないのに、そんな言葉が口から出る。

本当は、お礼なんて言いに来たなんて嘘なのに。

本当は、確かめに来ただけなのに。