メロンパンにさようなら


放課後、バイトがある愛は、

「今日も、陸上部見に行くの?」

と、少し遠慮がちに聞いてきた。


「ん?今日は、ちゃんと天文部に顔出すよ」

“陸上部”って言葉にビクッと体が反応したけれど、平静を装って答えた。


「なんでっ!?」

「なんでって、私、天文部だし?」

「いや、そうじゃなくてね」

「バイト頑張ってね。じゃあ、また明日」

愛が何か言いそうなのに、遮るように言葉を続けて、手をヒラヒラさせて愛にバイバイして逃げるように廊下へと出ると、


「ちょっとっ、佳奈っ!」

と、愛が追いかけてきた。


「ごめん、愛。……落ち着いたら話すから」


愛は、なんとなく分かってたんだね。

小室先輩が、どんなことを言ったのか、大体予想ついてたんだね。



「落ち着かなくても吐き出したらいいんだからね。分かった?」


宥めるように、そう言うと

「じゃ、もうバイト行くね。いつでも言って来なよ。じゃ、また明日」


笑ってそう言って、帰って行った。


「ありがと。愛。ごめんね」

小さくなる彼女の背中を見ながら呟いた。