彼は、こちちには全く気付いてない様子で顧問の先生の話を聞きながら、助走をしたり、歩幅を合わせたり、何度も練習を繰り返していた。 「あの、」 「ん?」 「青野先輩は、今日は跳ばないんですか?」 ここに、一緒にこうやって彼の見学をしていることに今更ながら疑問が沸いていて聞いてみた。 「今は、高見の時間」 「え?」 「ずっと休んでたからな。今のレベルを知るための時間ってやつ?」 その言葉で、フィールド内の走り高跳びのバーの前には、彼と先生の二人しかいないことに気付いた。