「高見はさ、楽だからって言ってた」

「え?」

「お前といると、楽なんだって、それってさ、」

“ガラガラッ”


部長の言葉を遮るように、突然、地学室の扉が開いて、話すのを止め、二人ほぼ同時に扉の方へ視線を移すと、そこには、昨日来た彼女、小室由紀が立ってこちらを見ていた。



「今日は、高見、来てねぇけど」

そう部長が彼女に告げ、その言葉を聞いて、彼女が帰っていくと思っていたけれどそうじゃなかった。



「知ってる」

そう返事をした彼女は、ゆっくり教室の中に入りながら、こう言ったんだ。


「今日は、植草佳奈さんに用があるの」

と。


「え?」

私に用?


真っ直ぐ、私から視線を逸らそうとしない彼女に怖ささえ感じられる。

何を言われるか分からなくて、ここから逃げ出したい気分になった。


「植草さん?」

近づいてきた彼女、小室由紀の表情は、にこりとも笑っていなくて、これから言われる事は、楽しい話なんかじゃないんだって予想できた。