ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―

十二月二十四日。クリスマスイヴ。
バンドの解散、羽月とサトシの関係について、
ミツは洋二に何も聞けないでいた。

洋二の大切なものを、洋二は失いつつあるように思えた。
しかし、洋二はそれについて何も口にしなかった。
何とも思っていないような態度すらとった。
それがミツには歯がゆい。

レミと別れてから、彼女のいないミツはイヴもバイトを入れていた。
「ミツ!次休憩は入っていいぞ!」
店長がミツに声をかける。
ミツは帳票をまとめて揃え、ファイルに戻し返事をした。
「うっす。」

「なあ、ミツ。来月のシフトなんだけどさあ。」
店長がスタッフたちの休み希望が書き込まれたカレンダーを手に、
事務椅子を軋ませてミツを呼んだ。
ミツは店長のデスクに近寄った。
「そのことなんすけど・・・。」
店長はミツを見上げてメガネをあげた。

「その、辞めます、おれ。」
言葉こそ言いにくそうに切り出したミツだったが、心はもう決まっていた。
顔をあげて店長へと眼差しを向ける。
「そうか。就活始めたのか?」
「違うんすけど・・・。」
店長はデスクに向き直った。
「大人んなってさ、思うあん時って今なんだよな。」
「はい?」
店長は頬杖をついた。
くすんだ色の肌にパソコンモニタのブルーが重なる。

「だんだんオッサンになるとさ、
自分が今いくつだったか忘れそうになるんだよね。」
「そういうもんすか。」
ミツは手持ち無沙汰になり、エプロンのポケットに手を入れた。
ずっと洗濯していないエプロンのポケットの中の綿ぼこリが指に触れる。
「あれから何年経ったんだっけって思ってさ、指折って数えていくんだわ。」
 店長はミツを見た。
メガネの奥の疲れた瞳が笑っている。