ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―

PVを書き出したミニDVテープを入れた茶封筒を、
ミツは郵便局の窓口で差し出した。
代金を払って、窓口の女性が茶封筒を受けとる。
切手を貼られて、布袋の中に滑り込んでいく。
ミツは目で追っていたが、順番をせかす老婆に小突かれて、列から離れた。
 
ミツは、卒業できるかわからないのに、
卒業旅行には誘われてもいけるように貯めていたバイト代を全ておろした。

ATMから出たミツは封筒の中を改めるように数えた。
ため息をつき、封筒をバッグにしまうと、携帯電話を取り出した。
呼び出し音が数回鳴る。

「あ、もしもし?母さん?」
「何、めずらしいね、ミツヒロから電話してくるなんて」
「いいじゃん・・・」
「お金の催促ら?」
「・・・・・」
 ミツは頭をかく。カップルが手をつないで、ミツをさけて通る。

「何に使うの?」
「ビデオカメラ買う。半分はバイトで貯めたお金でなんとかなる。」
「あんた、卒業せんつもり?」
「違うって。とにかくお金貸して欲しい。絶対返すから」
「返すアテなんてあるん?」
「今はない。でも、今じゃないとダメなんだ。」
ミツの声にすれ違う通行人が振り返る。

「・・・わかった。早いほうがいいでしょ?まだ銀行やってるから、
今から振り込んどいてあげる。」
「ありがとう。」
「ちゃんと食べるんよ。」
「わかってる。」
「コンビニ弁当ばっかじゃあかんから。」
「わかってる。」
「カップラーメンも一緒だでね!」
「わかってる。わかってるから。」
ミツは耳から離した携帯を握り締める。

十月も終わりに近づいている。
ウィンドウにハロウィンのかぼちゃが大きな口で笑い、
まだ昼間の暖かい日差しが、歩道に光の池を作る。
大きく踏み出したミツの陰が、光の池を飛び越える。