ラバ―ズΧクロス


「もしもし?」


電話の向こうから落ち着いた葉月の声が聞こえきた。


「しつこいよ。葉月…」


わざと拗ねた声を出すと、鈴の音のような笑い声がなる。


「最初にからかってきたのは圭ちゃんでしょ?」


「そうだけど…」


「倍返ししないと気が済まないの」


意地悪く笑う葉月は、いつもの雰囲気と違う。


「葉月って、腹黒いよね…」


「え?そう?」


「うん…」



ふと、一瞬だけ間が空いた。


「圭ちゃん」

「何?」

少し真面目になった葉月の声にドキッとする。


「何かあった?」

「ええっ!!」


動揺しうろたえたあたしに、葉月は優しく問いかける。


「やっぱり。どうしたの?良かったら私、話聞こうか?」



葉月の言葉に、きゅぅっと胸が痛くなる。


さっきの沈んだ気持ちが、少しずつ現れる。


無意識の内に、唇を噛んでいた。


「圭ちゃん?本当に大丈夫?」


「ん?…ああ、うん。大丈夫」


明らかに沈んだあたしの声では納得しないのか、葉月が食い下がる。