「あ~、良かった。無事だわ」


そう呟いたのを聞き、あたしも胸をなで下ろす。


うんしょ…と声を上げてお母さんが買い物袋を持ち上げた。

その瞬間よろけた。

「あぶなっ!!」


あたしがギリギリで支える。


「あたしが持つよ」

買い物袋を奪い取るとお母さんが溜め息を漏らした。


「何?」


「いや…、ねぇ。何であんたは男の子に生まれなかったのかな、と思って」


「はぁ?」


あたしはダイニングのテーブルに荷物を下ろしながら、怪訝な顔をした。


「だってねぇ…。背も高くて力持ちで、楽天的で…。男の子だったら、相当モテたでしょうに…」


「それ、娘に言うこと?」


あたしは、そっぽ向いて呟いた。


…つ―か、今のまんまでもモテてるわっ!!


……………………女子に。


気持ちが沈み始めているあたしに気づかないあたしに、お母さんは更に続ける。


「葉月はあんなにお淑やかで可愛いらしいのに…。圭といとこなんて信じられないわ」


カッと顔が熱くなる。


あたしは唇を噛みしめて無言のまま、二階の自室に向かった。