ちょうど、中学に上がる前の春休みのころだった。
三人でまた、水族館で遊んでいたころ。
大分、お小遣いというものをもらえるようになって、私達はイルカのぬいぐるみを買った。
私はオレンジ。
知樹は黄色。
理恵は水色。
それぞれの色のイルカを買った。
平野内水族館には三匹イルカがいる。
三匹とも女の子のイルカ。
一匹目の名前は春海(はるみ)人に慣れていて、イルカショーでもメインを占めるのはいつも春海。
春海の尾びれにはオレンジの輪っかがはめられている。
二匹目は夏海(なつみ)すっごく器用で、小道具を操るのが上手。
夏海の尾びれには水色の輪っかがはめられている。
三匹目は冬海(ふゆみ)平野内水族館はイルカショーの水槽を下からも見ることができるんだけど、いくつか、イルカ達が見えるようにガラスがある。
冬海は自分を撮って下さいと言っている様にガラスの前をゆっくり泳ぐ。
ガラスに顔を近づけてみたり、手を振ったりすると、冬海はとっても機嫌がいい。
冬海は黄色の輪っかをつけていた。
そんな三匹のイルカ達が、私達は大好きだった。
そして、自分が買ったぬいぐるみは、自分が大好きなイルカのぬいぐるみだ。
綺麗に好みが分かれる私達。
でも、いざそのイルカ達を互いに抱えてみると、それぞれのイルカが、それぞれに似合っているような気がしてうれしかった。
水族館からの帰り際、私達は自分で買ったぬいぐるみを抱きかかえながら歩いていた。
「私、ベッドの枕元にふーちゃん置いとこw」
「じゃ、私のはるちゃんは机の上!知樹は?」
私は右側を歩いている知樹に尋ねた。
「んーー・・。本棚の上か・・、そこらへん。」
「もしかして、あの黄色の本棚?」
理恵が知樹に尋ねる。
「あぁ。」
「へー、あの本棚か。」
お互いに家に遊びに行ったりは、数え切れないほどしている。
大体のお互いの部屋の構図や家具などは覚えてしまった。
「なんども上ったよね。」
私はぼんやりと幼きころを思い出した。
