次の日、教室に入った途端、鮫島に謝られた。


「昨日は本当にごめんなさい」


一瞬なんの事かわからなかった。昨日の事など、すっきり忘れていたのだ。戸惑っている俺を見て鮫島は微笑みながら言った。


「奈穂って名前、素敵だと思います」


いきなり名前を誉められたことと敬語に、俺は思わず噴き出してしまった。そんな俺を見て鮫島はきょとんとしていた。


「…名前、急に誉められても…。それに敬語って…、くくっ」


今思えば、おもしろいことなどひとつもなかったのに、鮫島の言った事がつぼに入ってなかなか抜けなかった。
きょとんとしていた鮫島は、笑われた事が相当恥ずかしかったのか赤い顔で


「わっ…、笑わないでください!いい名前じゃないですか!私、将来男の子生んだらその名前つけるかもですよっ!」


と言った。赤い顔で必死になって言う鮫島もまた、つぼに入った。


「本当に…いい名前だと思ったんですよ?」


俺の覗き込むように鮫島は言った。ほんのり頬が赤くなりながらそう言う彼女はとても可愛かった。