優しい愛





それからまた、沈黙が訪れた。

俺は、手元の本を読みながら
読めていなかった。



ぼーっとしていると、急に隣から
図書館には似合わないような大声で
山本に呼ばれた。


違う世界に翔んでいた俺は
急に現実に連れ戻されたようで
肩をびくつかせてしまった。


「…っくりした。何?」



「あ、ごめん…」




あ、謝らせちまった。



「いや。


どうした?」


なるべく優しく、怒っていないことを
アピールしつつ、用件を聞く。



「あのね。



「滝くんは、寂しくないの?」





驚いた。

普段は、クールとか冷血とか
そういうことしか言われないし


なにより




寂しくないと言ったら嘘になるから。




理由を聞けば



「あの日私に寂しくないのって、
声を掛けてくれたのは
自分も同じように寂しくて
私に気づいてくれたんじゃないかなあ


って思うから」




って山本は言うから。