本が読みたかった。ただそれだけ。
だけどそれが、俺を救う選択になるとは
想定すらしなかった。
なんの本を読むかなんて
普段本なんて読むはずない俺が
決めているわけないから、
ふらふらと本棚を見ていた。
そのときに
前にあらわれた人影が誰かなんて
すぐに解ってしまった。
「山本?」
キョロキョロと辺りを見回して
前を向いた山本は、
驚いたように目を見開く。
「あれ。滝くん?」
「うん。」
山本の隣、行くか。
今いる場所を何も言わずに動く。
だけどさっき山本がいた場所に
山本はいなかった。
どこ行った?…ああ、いた。
「山本。」
「あれ?帰ったのかと思った。」
そりゃ俺の方だよ。
「なんで。」
「いなくなったから。」
山本が、だろ。まあ、いいや。