また、沈黙が訪れた。
失敗しちゃったなって思ったけれど
またすぐに沈黙は破られた。
「さんきゅうな。」
固まってしまった。
まさかお礼を言われるなんて、
微塵も思わなかったから。
それから
滝くんの笑った顔を
初めて見たから。
すぐに真顔に戻ってしまったけれど。
その時に感じた、この気持ちは
りっちゃんが言っていた、
"胸が締めつけられる"
気持ちだった。
私は、滝くんが、好きなんだ。
さんきゅうな。と言った滝くんは
それから言葉を発することはなくて
そのあと放課後までずっと沈黙だった。
だけど帰り際に
「ん。」
と言ってドアを開けてくれた
滝くんのさりげない優しさと
無言で渡された小さなメモ用紙が
滝くんをまた、知らせてくれた。