あすか、妹のまみを迎えに行く


 まみの耳にかすかな靴音が聞こえてきました。

「あっ おとうさんだー」

 まみは階段をかけおりました。お姉さんのあすかと競争です。

ふたりの銀色の長い毛並みが、ふわっと風になびきました。

「ただいまー」

 お父さんが帰って来ました。

「おとうさんおかえりなさい おしごとおつかれさまでしたー」

「あすか、まみちゃん、ただいま」

 お父さんはふたりの頭をなでてくれました。

「おとうさん おかえりなさい」

 あすかはお姉さんらしくおちついています。

「おとうさん まみはしっかりおるすばんしていました」

 まみはお父さんにいちにちの報告をしました。

「おかあさんの おからだのぐあいもよかったです」

「あすかちゃんとも なかよくしてました」

 まみがこの家に来て一週間になりました。

 お父さんとお母さんは一と月前に、田中さんの家からあすかだけを

つれてきたのでした。

 自動車の中からあすかが見た四月の街は、桜の花が満開でした。

お兄さんやお姉さんが巣立って行ったあとも、いちばん小さなまみを

むかえにきてくれる人はいませんでした。

「かわいそうに、まみちゃんもうちの子にしましょうよ」

 ある日お母さんがお父さんに言いました。

 お母さんはかしこそうなまみのことが、ずっと気になっていたのです。

「そうだね。まみちゃんはかしこそうな子猫だったね」

 お父さんも賛成しました。

「あの子には、ほかの子とちがうなにかがあるのよ」

 お母さんは言いました。